今月の臨床 婦人科腫瘍境界悪性—最近の知見と取り扱いの実際
最近の知見
1-1.子宮頸部境界悪性病変—遺伝子異常との相関を中心に
今野 良
1
,
佐藤 信二
1
,
矢嶋 聰
1
1東北大学医学部産婦人科
pp.990-993
発行日 1996年8月10日
Published Date 1996/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902614
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子宮頸部異形成は子宮頸癌の境界悪性または前癌病変として位置づけられる.予備細胞から生じた扁平上皮化生のなかに異形成変化が起きる.その一部が上皮内癌を経て浸潤癌に進行するものと理解されている1).ただし,異形成病変から癌に進行するものはけっして多くなく,軽度異形成では約1%,高度異形成でも20%程度にすぎない2).
異形成とは頸部上皮に何が生じたときにできる病変なのか,また,異形成が癌に進行するためにはどんな遺伝子変異が起きているのか,など頸部病変における癌化過程を知るうえでこの境界悪性病変の生物学的性格を知ることは重要である.子宮頸癌および境界悪性病変である異形成の90%にHPV(human papilloma virus)が存在しており,発癌機構のうえで最も重要なeventであると思われる.本稿ではHPV感染とその次に生じるmolecular eventに関する最近の話題を概説する(図).
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