症例
腹部CTが診断に有用であった後腹膜腔ヘルニアによるイレウス
森田 哲夫
1
,
高田 眞一
1
,
森 宏之
1
1帝京大学医学部産婦人科
pp.223-226
発行日 1996年2月10日
Published Date 1996/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902434
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卵巣癌手術後にイレウスを併発し,管理,診断に苦慮した症例を考察を加え報告する.患者は45歳,1経妊1経産.腹腔内に充満する巨大卵巣腫瘍(漿液性乳頭状嚢胞腺癌)のため開腹手術(単純子宮全摘,両側付属器切除,骨盤・大動脈リンパ節郭清,大網切除)を施行し,同時に腹腔内にCBDCA600mgを散布した.手術後20日目に化学療法を施行した.化学療法後7日目に上腹部痛と嘔吐を訴え始め,腹部X線写真で鏡面形成と拡張する小腸像を認めた.腸蠕動が低下していたため,麻痺性イレウスと考え,保存的に対処したが症状は著明には改善しなかった.たまたま,急性膵炎が併発し,それによる麻痺性イレウスも原因の1つと考え保存的に経過を観察した.膵炎は軽快したが麻痺性イレウスは改善せず,腹部CTより機械的イレウスの存在が疑われ,保存的治療をあきらめ,発症から54日目に開腹術を施行した.腹腔内には癒着はなかったが,後腹膜腔へ小腸が40cm迷入しており,これがイレウスの原因であった.難治性の術後イレウスにおいてこのような病態も考慮にいれておく必要があると思われた.
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