今月の臨床 妊娠と血液
血管攣縮・血液凝固と妊娠・分娩
11.羊水塞栓症
寺尾 俊彦
1
1浜松医科大学産婦人科
pp.598-600
発行日 1995年5月10日
Published Date 1995/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902120
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羊水塞栓症はまれな疾患であるが突然発症し,しかも救命率が低いことから産科医を悩ます疾患である.
本症は何らかの原因で羊水中の成分が母体血中へ流入して発症するが,羊水中のどんな成分が本症の重篤性に関与しているのかは完全に明らかにされたわけではない.卵膜の破水個所から羊水成分が流出し,子宮血管に流入すると考えられるので,破水していること,子宮内圧の病的上昇があること,子宮血管が露出していることなどの条件が重なった時に発生するものと思われる.重篤になる理由としては肺動脈塞栓による肺動脈圧の上昇により心肺機能が低下する,アナフィラキシー様の反応により肺動脈や気管支が攣縮する,その他続発性DICなどが挙げられる.これらの病態を引き起こす羊水中の成分は羊水,羊水中微粒物質(毳毛,胎脂,扁平上皮細胞など),胎便中に存在する物質(ムチン,胆汁色素など物理的塞栓を起こすとともに,マクロファージ,好中球が遊出して肺組織でchemical mediator,例えばサイトカイン,PG,セロトニン,ヒスタミンを放出する原因となる物質)が考えられるが,中でも胎便中の物質が主役をなすと考えられる.
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