今月の臨床 妊娠と血液
8.妊娠中毒症と慢性DIC
高木 耕一郎
1
,
赫 文栄
1
,
橋口 和生
1
,
村岡 光恵
1
,
中林 正雄
2
,
武田 佳彦
1
1東京女子医科大学産婦人科
2東京女子医科大学母子総合医療センター母性部門
pp.584-588
発行日 1995年5月10日
Published Date 1995/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902117
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●はじめに
妊娠によって母体の凝固・線溶系は質的・量的な変動をきたすことが知られている.すなわち,その妊娠性の凝固・線溶系の変化は凝固亢進と線溶低下であると表現される,このようないわば生理的な凝固線溶系の変化を基礎として,妊娠中毒症では凝固・線溶系のバランスの破綻と,それに関連して胎盤,母体の腎を中心とした血管障害が中毒症の病態形成に重要な意義を持つと考えられている.
一方,悪性腫瘍患者では古くより血栓性静脈炎が多いことが指摘され,その背景に凝固因子の消費増加と線溶亢進を持つ急性DICと異なり,消費された凝固因子や血小板がそれらの産生亢進によって代償された状態,すなわち過代償性DIC,あるいは慢性DICが存在することが知られている.
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