今月の臨床 妊産婦と薬物治療─EBM時代に対応した必須知識
Ⅱ.妊娠中の各種疾患と薬物治療
4.妊娠・出産にかかわる疾患の治療と注意点
[妊娠・分娩] 産科DIC
末原 則幸
1
1大阪母子保健総合医療センター産科
pp.642-643
発行日 2005年4月10日
Published Date 2005/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100303
- 有料閲覧
- 文献概要
1 診療の概要
妊娠中は凝固因子の増加と,凝固抑制因子の減少,線溶を抑制する因子の増加など,凝固亢進,線溶抑制の状態にある.このことは妊娠・分娩に際しての出血量を少なくするという合目的的ではあるが,血栓を生じやすく,DICに陥りやすい状態にある.
弛緩出血や子宮破裂,頸管裂傷などである程度の出血があっても,子宮内に蓄えられていた血液が体循環に戻るため,ある程度の出血には産婦は耐えるが,出血量が多くなり,循環血液量が減少すると交感神経系が緊張し,カテコラミンの分泌亢進により心拍数が増加し,末梢血管抵抗が増す.また赤血球の減少も相俟って末梢での低酸素状態が続き,嫌気性代謝が進み,代謝性アシドーシスとなる.さらに循環不全が続くと,血管内水分は細胞間質へ漏出し,循環血液量がさらに減少する.このような循環障害が改善されないと,多臓器不全へ移行し不可逆性ショックに陥るとともに,血管内の凝固因子が消費されDICをきたす.
Copyright © 2005, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.