今月の臨床 胎盤—母児接点としての役割
発生と形態
3.着床形式と胎盤形成
渡辺 芳明
1
,
畑 俊夫
1
1埼玉医科人学産婦人
pp.960-962
発行日 1994年8月10日
Published Date 1994/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901834
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着床形式と胎盤の形態
妊卵が予宮内膜に着床すると母児間の接点である胎盤の形成が始まる.着床の形式は動物の種類により異なり胎盤の形態に大きな影響を与える.着床形式には,1)中心着床central implantation 2)偏心着床eccentric implantation 3)壁内着床interstitial implantationがある.中心着床は食虫類,食肉類,有蹄類,有袋類,原猿類,ウサギなどにみられる.胚盤胞からトロホブラストが増殖・拡張し,子宮内膜上皮と広い範囲にわたり接するのみである,したがって,胎盤の効率に限界があるため子宮内での胎児の発育には限界がある.偏心着床はげっ歯類,霊長類にみられ,子宮の反間膜側の着床室に着床する.ヒト,チンパンジーは壁内着床を示す.トロホブラストが子宮内膜に侵入していき胞胚は子宮内膜に埋没する.最も進化した形である壁内着床では,胎盤の機能も効率よく高度なものとなり,長期間にわたり胎児を成熟させる.
哺乳類の胎盤は上皮絨毛胎盤,結合組織絨毛胎盤,内皮絨毛胎盤,血絨毛胎盤に分類される.ヒトの胎盤は血絨毛胎盤である.個体発生は系統発生をくり返すというように胎盤の発生も着床の過程で主皮絨毛胎盤から血絨毛胎盤という形態をとって形成されていく.トロホブラストは母体に侵入し脱落膜と共同して胎盤や羊膜を形成していき,分娩後,脱落膜の部から剥離する.
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