産婦人科クリニカルテクニック ワンポイントレッスン
帝王切開術の下部横切開筋層縫合のテクニック
高村 郁世
1
,
西谷 巖
1
1岩手医科大学
pp.900
発行日 1994年7月10日
Published Date 1994/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901822
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多くの手術の中で帝王切開ほど,劇的な手術はない.しかも,これが前もって計画的に行われる事はむしろ少なく,術前検査や輸血あるいはマンパワーの確保などが十分に行われないまま,緊急に手術を開始することが多い.したがって,術中は,できるだけ手術時間を短縮し,出血量を軽減できれば,輸血するにはいたらず,手術侵襲も最小限にとどめることができる.帝王切開の全手術操作を通じて,最も重要なポイントは,子宮下部筋層の横切開部位より水道の流出にもたとえられる噴出する出血を,いかにはやく縫合止血するかということである.この手技について,われわれの行っている方法を述べたいと思う.緊急に帝王切開を行う場合は,下腹部皮膚縦切開によって開腹し,妊婦の体格と娩出する胎児の推定体重にあわせて,開腹鉤を用いず,児が大きい時には内田式帝切鉤,小さい時には膀胱圧抵鉤を恥骨結合部にかけて膀胱を下方に圧排し,子宮下部の膀胱子宮窩腹膜の部位を露出し,中村の方法で腹膜と子宮筋層の間の剥離操作を行わず,一括して両者にメスをいれ,用指鈍的に切開創を左右に延長し,破膜と同時に胎児および胎盤の娩出を行う.ついで,杉山の方法で子宮体部を腹腔外に取り出し,ダグラス窩に紐つきタオルを挿入する.この操作で子宮下部が挙上され,縫合が容易となり,また血液や羊水の腹腔内への流入を防ぐことができる.
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