今月の臨床 帝王切開
帝王切開の実際
24.子宮壁の横切開法,各種縫合法
辻 啓
1,2
Akira Tsuji
1,2
1辻産婦人科医院
2帝京大学産婦人科
pp.708-709
発行日 1992年6月10日
Published Date 1992/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900896
- 有料閲覧
- 文献概要
子宮壁の横切開法
腹式帝切における子宮壁の切開は,子宮下部横切開法(腹式深部帝切)で行うのが現在主流になっている。ただし,従来の腹式深部帝切の術式では図1に示すごとく子宮下部の横切開はできるだけ下方で行った方が良いとされる傾向にあった。それは下方の方が筋線維の走行に沿って子宮が横に裂けて,ちょうど良いし,切開創の縫合不全も起こしにくいからだとされた。しかし筆者の経験では,あまり下方で切ると胎児娩出後,子宮の収縮に伴って子宮切開創の下縁も下方へと深いところへ引込んで行って恥骨や膀胱の背方へ隠れてしまい,それを引き上げて子宮切開創上縁と縫合するのはかなりむつかしい。また膀胱が近くなるので膀胱に縫合針が掛り易い。また切開縁の下方端と上方端とで,子宮収縮後,厚さの差が極端になって,図2(a)のごとく上縁は厚くなり,下縁は薄くなって,両者の接着縫合がやりにくい。
また図3に示すように,従来の子宮下部の下方の横切開では,両側方が尿管膀胱侵入部や子宮動脈の走行に近いので尿管や子宮動脈の損傷や断裂を起こし易く危険であり,meritよりもdemeritの方が多い。
Copyright © 1992, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.