臨床研修セミナー 手術手技
V.帝王切開
峡部横切開法
中村 隆一
1
Ryuichi Nakamura
1
1国立京都病院産婦人科
pp.759-766
発行日 1990年9月10日
Published Date 1990/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409904878
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筆者に与えられたテーマは「峡部横切開法」となっているが,主として英語圏においてtransverse lower uterinesegment incisionと普遍的に称せられる術式である。わが国では従来,子宮—深部・頸部・下部・峡部—切開などと種々の名称が用いられていたが,これはTransperitonealer Zervikaler Kaiserschnitt(nach Opitz)やSectio caesaria isthmica nach W. Weibelなどのように近代の本邦医学が明治期にドイツ医学を範とした故ではないかと思われる。最近のわが国の教科書では“子宮下部(峡部)切開”と記載されることが多いようであるが,本稿では峡部横切開として記載することとする。余談ではあるが,近年のドイツではKeiserschnitt(帝王切開)は余り使用せずSchnittentbindung(切開娩出術)を多用しているようである。
子宮内に在る胎児を子宮峡部を切開して娩出させる術式は古く1805年頃よりOsiander,Joerg,Ritgenらによって行われていたが,1907年にFrankによる腹膜外術式から1924年のPortesによる経腹膜後に腹腔を閉鎖して峡部に切開を加える術式で感染による母体死亡を激減させて子宮峡部帝王切開は多くの産科医の認知するところとなったのであり,おそらくそのころより旧来の子宮体部を切開する術式は古典的帝王切開と称されたと推察される。
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