産婦人科クリニカルテクニック ワンポイントレッスン
腹式帝王切開術中の子宮下部横切開手技
島田 信宏
1
1北里大学
pp.124
発行日 1995年1月10日
Published Date 1995/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409902021
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腹式帝王切開術では,腹膜内であれ,腹膜外の手法であれ子宮筋層には下部横切開術が用いられ,胎児を娩出する.その切開創によって帝切時の出血量の多い少ないが弛緩出血でもない限りは決まってしまう.つまり,胎児が娩出される容積の最小限を,筋層の大きなダメージなしに切開していれば,あとの縫合も少なくてすみ,出血量も少ないが,横に裂傷のように子宮筋層がさけたりすると子宮動脈からの出血も加わって多量になってしまう.そこで,子宮の下部横切開のとき,切開する部位がきまったら,まず,その部位にうすく,厚さ2mmぐらいにメスの腹で切るというより,しるしをつけるぐらいの感じで切開創をつくる.ついで,長ペアン鉗子(コッヘル鉗子でもよい)をもち,先端を子宮筋に対してななめに,先のメスの切開創の中央部にあてて,少し圧力を加えて先端を子宮筋層のなかへめり込ませる.そして,卵膜の軽い抵抗が感じられるところで進入をとめる.このごく軽い卵膜の抵抗感がわかるように慣れることが大切で,それより先へ鉗子をすすめると破水してしまう.この破水の前で,鉗子の進入をとめて,鉗子の先を開く.すると,子宮筋層は横に開大し,その切開・拡大創から卵膜が突出してくる.この突出してきた卵膜の圧力で子宮切開創からの出血を止められ,胎児娩出に不必要なほど創も拡大しない.
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