症例
妊娠22週にて急性膵炎,糖尿病性ケトアシドーシスを発症した1例
大口 昭英
1
,
谷村 悟
1
,
佐竹 紳一郎
1
,
小嶋 康夫
1
,
舟木 寛
1
,
金井 浩明
1
,
中野 隆
1
,
舘野 政也
1
,
臼田 里香
2
,
若栗 宣人
2
,
久保 正
2
1富山県立中央病院産婦人科
2富山県立中央病院内科
pp.667-672
発行日 1994年5月10日
Published Date 1994/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901751
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妊娠中は糖尿病が誘発されたり増悪したりしやすいことが知られている.しかし,糖尿病の既往がなく,妊娠中に突然糖尿病性ケトアシドーシス(以下DKAと略す)に至る症例はまれである.今回われわれは,妊娠22週に急性膵炎を伴って,突然DKAを発症し子宮内胎児死亡をきたした1例を経験した.
症例は,妊娠20週までは尿糖,尿蛋白などは認めず,妊娠22週に悪心,嘔吐,心窩部痛,胸背部痛が出現し某医より当科へ紹介された.某医では胎児心拍を認めたが,当科での超音波検査の結果胎児心拍動は消失していた.入院時の緊急検査で,白血球数,血清アミラーゼ値,およびACCRの上昇を認め,急性膵炎と診断した.また,血液ガス分析で代謝性アシドーシスを認め,高血糖値,尿ケトン体強陽性であったことから,DKAと診断した.本症例のように妊娠中に急性に発症するDKAでは子宮内胎児死亡をきたすことが多く,産婦人科領域において念頭におくべき疾患と思われる.
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