今月の臨床 婦人科外来検診マニュアル
H.患者への対応
53.ムンテラについての注意
宮川 勇生
1
1大分医科大学産科婦人科
pp.540-541
発行日 1994年4月10日
Published Date 1994/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901715
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「ムンテラ」という言葉は,日常の診療の場で,しばしば聞かれる医療用語である.語源は,ドイツ語のMund Therapieの発音の頭文字を取って作られた日本流の造語であると,入局当時に先輩医師から教えてもらった.先日,読んでいた小冊子には「医師のホンネ用語」のひとつとして「ムンテラ」が取り上げられ,「言葉での治療.言い換えると家族へ病状を説明すること.もっと言い換えて患者を適当に煙に巻くの意」と書かれていた.
「ムンテラ」は,「患者やその家族に真実の病状を誠意を持ってよく説明し,その経過,治療法,結果に納得,同意してもらう」ことを意味し,広い意味でのインフォームド・コンセント(説明と同意,十分知らされた上での同意)であるが,なかでも,予後の悲観的な病気をもつ患者,またはその家族に,患者が生きる希望を失わないような病状の伝え方をして,納得,同意してもらうこと,すなわち,「ムンテラ」は「治療経過が思わしくない場合や,治療が難しい場合,また,予後不良の場合に,医療の限界を知ってもらい,患者のqual—ity of lifeを考慮した説明をして,納得,協力してもらう,さらに,治療経過や予後不良を嘆いている患者に希望を持つような説明をして精神面の会話による治療をする」という意味が強い.したがって,前述の小冊子に見られるような解釈は,少なくとも現在の医療において,許される表現,解釈ではない.
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