怒りは問題を解決しない—「看護婦のくせにムンテラなんか……」と言われて

　準夜勤に向かう途中の花村さん．病棟へのエレベーターのなかでも，昨日急変した患者Sさんのことが気にかかってしかたがない．エレベーターをおりるやいなや，ナースステーションに直行し，Sさんの名札がかかっていることを確認すると，ホッとする気持ちと，その後どうなったかと思う気持ちとで複雑な心境である．

　Sさんは，慢性骨髄性白血病で3クール目の化学療法が終了したところで，状態も比較的安定していた．そこに急変．日勤者が帰ったあとで静まり返っていた病棟の雰囲気は一変し，医師をはじめ，当直婦長や家族があわただしく出入りし，結局，深夜勤務の始まりまでごった返していた．