今月の臨床 胎児環境をチェックする
双胎間輸血症候群
16.一児死亡の新しい対策—死胎児摘除
進 純郎
1
,
荒木 勤
1
Sumio Shin
1
,
Tsutomu Araki
1
1日本医科大学産婦人科
pp.1316-1317
発行日 1993年11月10日
Published Date 1993/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901512
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一絨毛膜性双胎では,胎盤血管吻合の存在のため双胎間輸血症候群を惹起しやすいことは周知の事実である。この場合に供血児は循環血液量が減少するために貧血となり,受血児は循環血液量が増加するために多血症となる。前者は貧血に伴う循環不全で,後者は心負荷過剰により胎児水腫などを合併して死亡する場合が多い。双胎一児死亡の発生頻度は3.27%(33/1,010)で,この場合の生存児脳病変の発症頻度は29.0%(36/124)であった1)。われわれの検討では脳病変発症群はすべて一絨毛膜性双胎であった。
一絨毛膜性双胎で生存児に脳病変が出現する原因としては,一絨毛膜性双胎に認められる胎盤血管吻合の存在,未熟性などがその引き金になっていることは十分予想されるが,現在までのところ生存児に発症する脳病変の原因として,子宮内DIC説(Moor,1969),塞栓説(Yoshioka,1979),急性血液動態・虚血性変化説(Fusu,1991)などが挙げられている。われわれは,死亡児側で産生された血栓が生存児に移行しないように予防することと胎児環境の改善を主眼として,一絨毛膜一羊膜性双胎一児死亡例で,一児死亡後できるだけ早期に死亡児を胎外に娩出させる手術を試みた。
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