今月の臨床 治療にてこずる感染症
難治性症例の経験
30.難治性(抗療性)梅毒
片庭 義雄
1
Yoshio Kataniwa
1
1日本大学医学部性病科
pp.1119-1121
発行日 1993年9月10日
Published Date 1993/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409901455
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
難治性梅毒には症候学的,血清学的両面における難治例と無症候性の血清学的な面だけの難治例とがある。また難治状態が継続的な場合と再発性の場合とがみられる。いずれの場合にせよ有効かつ十分と思われる駆梅治療に頑固に抵抗する梅毒を指すわけであるが,その多くは陳旧性の血清学的な難治性梅毒いわゆる血清学的抗療性梅毒1)である。血清学的抗療性梅毒はその定義がはっきりしないことから,かつてはその数が多く,梅毒は難治性疾患であるとの念をより強いものにしていたように思われる。しかし血清学的瘢痕治療の概念の容認と陳旧性梅毒では容易に陰性化を果たし得ない梅毒TP(Treponema Pallidum)を抗原とする梅毒血清反応の登場により治療後の低抗体価持続例は既往反応によるものとして抗療性梅毒から除外され,その数は著しく減じたといえる。近年における血清学的難治性梅毒とは高い抗体価の持続または再発を認めるものと解釈されるが,有効薬剤の豊富な今日にあっても,このような症例2)はもとより,症候学的な難治症例ともまれながら遭遇する。近時経験したHIV(Human Immunode—fficiency Virus)感染を伴う第2期顕性梅毒の2例ではルーチンの駆梅治療後,1例3)に1度の症候学的,血清学的再発,他の1例に2度の症候学的再発と異常に高い血清抗体価が認められた。
Copyright © 1993, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.