カラーグラフ 胎盤の生理と病理・9
血行性感染症
中山 雅弘
1
1大阪府立母子保健総合医療センター病理室
pp.1025-1027
発行日 1992年9月10日
Published Date 1992/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900986
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子宮内感染症は絨毛膜羊膜炎と血行性感染症に大きく分けられる.胎盤の病理所見を検討することにより,容易にこれらを鑑別できることは本シリーズの第5回(絨毛膜羊膜炎)に記載した.今回は血行性感染症について記す.
子宮内感染症として胎盤で絨毛炎を起こすものは,梅毒,リステリア,トキソプラスマ,サイトメガロウイルスや風疹ウイルスが主なものである.梅毒は壊死性血管炎や増殖性炎症を起こす.胎児・新生児に先天梅毒を起こす時には必ず胎盤に組織学的には病的な所見が得られると考えてよい.しかし,絨毛膜羊膜炎と異なり多数の組織標本を作成することが望ましい.絨毛膜羊膜炎の時には極端に言えば胎盤表面,臍帯の各1枚の切片で診断が可能であるが,血行性感染症の時は胎盤実質から少なくとも3枚以上の切片が必要であろう.先天性リステリア感染症では胎盤実質内に膿瘍形成があることが特徴である.先天性トキソプラスマ感染症はその存在自体にも疑問が投げかけられている.当センター病理の約10年間の経験においても臨床的な疑診例1例のみであり,それも死産の解剖後に確定できなかった.先天性サイトメガロ感染症は新生児の敗血症のみならず臨床的に原因不明の胎内死亡の時にも見つかることがある.
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