今月の臨床 卵巣がん—疫学から治療まで
術中・術後診断
18.迅速診断の意義と限界
並木 恒夫
1
Tsuneo Namiki
1
1国立仙台病院臨床検査科病理
pp.826-827
発行日 1992年7月10日
Published Date 1992/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900930
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迅速診断の最近の動向
CT,超音波やMRIなどの画像診断の進歩および穿刺吸引細胞診(以下FNAと省略)の積極的導入によって,乳腺および甲状腺では術前に悪性腫瘍の組織学的レベルでの確定診断がほぼ80%の症例で可能になった。FNA陽性の予測値predic—tive value(テスト陽性の場合の信頼度)は控え目に診断した場合ほぼ100%であることから,癌と確実に診断できた症例については,迅速診断が行われる機会が少なくなった。これに対して陰性の予測値(テスト陰性の場合の信頼度)は100%ではない。Sampling errorによる標本不満足や誤陰性がかなり多いほかに,高分化型腺癌の場合には腺腫や境界悪性病変との鑑別がむずかしく,誤陰性や疑陽性(良性か悪性か不明)となる症例がかなりみられる。また細胞診では浸潤の有無を確実に証明できず,腺腫や境界悪性腫瘍(上皮内癌を含む)と浸潤癌の鑑別は100%確実ではない。
逆に良性疾患だが異型が強い場合には疑陽性(良性か悪性か不明)と判定される。良性ないし境界悪性腫瘍の一部に浸潤癌がみられるような場合にも,FNAの信頼度は低い。
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