今月の臨床 分娩前後の1週間
産褥
36.乳房マッサージ
根津 八紘
1
Yahiro Nezu
1
1諏訪マタニテイークリニック
pp.611-613
発行日 1992年5月10日
Published Date 1992/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900868
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母乳哺育推進とともに乳房マッサージの必要性が叫ばれ,久しくなる。しかし多く,産褥看護の一環として,看護婦や助産婦が産褥にしてやるという方向で行われている。妊娠・出産・育児が人間のごく当り前の生き様であるならば,育児の中の母乳哺育,中でも母乳を出して子供に飲ませて行くことは,母親が自ら行って行く当然の事柄であり,自ら行って行けるよう指導者が指導して行くことも当然の事である。にもかかわらず,褥婦全員にマッサージを施行している施設や,指導者が居ることは,大の大人に御飯を箸で口まで運んでやったり,トイレでお尻を拭いてやっているのに等しいことである。自立自活して子育てのできる母親へと指導してやることが本来の指導者の役割であり,そうしてやることは,手を掛けてマッサージしてやることより,もっと労力を要することである。
最近,親切医療を強調する余り,何でも褥婦にしてやる傾向があるが,ただでさえ育児能力の無い親が多くなったと言われる現在,マッサージをしてやることは,それを一層助長する行為に外ならないのである。
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