今月の臨床 分娩前後の1週間
ルーチン・ケア
3.分娩経過の診断法
久保 武士
1
Takeshi Kubo
1
1筑波大学臨床医学系産婦人科
pp.522-523
発行日 1992年5月10日
Published Date 1992/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900835
- 有料閲覧
- 文献概要
分娩経過を評価するためには,陣痛情報,内診所見,胎児情報などが必要であるが,これらの情報が数値データで表現されている限り,その数値データだけに基づいて分娩の進行状況の良否を判断するのは,煩わしいことも多い。データが経時的に記載されていても,子宮口の開大の速さを評価するには一々経過時間を参照しながら判断せざるを得ない。この難点を解決するためにパルトグラムが考案され広く分娩管理に使われていることは周知のとうりである。それに記載される情報は子宮口の開大度と児頭の下降度,陣痛情報として陣痛周期と発作時間,それに胎児心拍数などが中心で,破水時刻,児頭の回旋,血圧・体温・脈拍などを加えたものが多い.しかし簡便を目指して一枚の用紙に全ての情報を盛り込むことは欲張り過ぎで,無理があり,それはかえってパルトグラムの利点を生かせなくなる。やはり,分娩の進行状況の評価が中心になるべきである。
正常分娩は,初産・経産で異なるが,それぞれ一定の時間内に終了するはずなので,正常値の時間を過ぎても分娩に至ってなければ,分娩遷延と診断され,何らかの処置を受けるのは当然である。しかし,これは終着駅で定刻になっても列車が列着しないので,あわてて延着の原因を調べるのに似ている。時刻表を参照しながら,途中の通過駅における列車の発着状況チェックしながら,延着を防ぐのが合理的であることは言うまでもない。
Copyright © 1992, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.