産婦人科医療--明日への展開 産婦人科とコンピュータ
産婦人科における計量診断
久保 武士
1
Takeshi Kubo
1
1筑波大学産婦人科学教室
pp.115-119
発行日 1983年2月10日
Published Date 1983/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206759
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Ⅰ.計量診断とは
科学の進歩は,常に「定性から定量へ」と向う。臨床医学は,必ずしも科学や技術と同じものでないが,医学の進歩につれ定量化が進められていることも明白である。医学の定量化も,各種の「計測」から始まる。非生命体を対象とした種々な計測技術が,生命体である患者を対象に適用され,患者の状態を表現するパラメータの計測が行なわれるようになった。従来は,単に発熱しているといわれる状態は,体温計で具体的な数値で表わされ,過期妊娠で低下しつつある胎盤機能は,尿中のエストリオール値やCAPの測定値で推定される。進歩した計測技術による測定が,客観的で,定量的な表現を与えているわけである。しかし,臨床医学ではこのような新しい測定技術に依存しない計量化の試みも多い。娩出直後の新生児の状態をアプガースコアで表わすのもその一例である。「白色仮死」や「青色仮死」という定性的な表現が,10点満点の数値で表現するのは一種の定量化,計量化である。妊娠末期における子宮頸管の成熟度を表わすBishop scoreや,岩崎スコアも同様の試みである。妊娠中毒症の重症度を表わすGestosis indexも又然りである。この種の計量化の特色は,対象の状態を表現するのに,いくつかの細目をもうけ,個々の細目を2〜3個の簡単な数値で表わし,それらを全て加算した和でもって数量的な表現を与えることである。個々の細目は,Gestosis indexの一項目である血圧のような計測値であることもあれば,Bishop scoreの頸管の硬さのように,個人の感覚に依存するものもある。
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