今月の臨床 子宮内膜症
子宮内膜症と不妊
16.不妊の発生機序
三橋 直樹
1
Naoki Mitsuhashi
1
1東京大学医学部産婦人科
pp.54-55
発行日 1992年1月10日
Published Date 1992/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900701
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子宮内膜症を合併した不妊症は頻度も高く,治療に抵抗性であることから大きな問題となっている。卵巣に限局した小さな内膜症性嚢胞を切除しただけで妊娠する例,あるいはラパロスコープではじめて診断されたような初期のものがホルモン療法で妊娠することもあり,子宮内膜症の不妊原因は癒着のような肉眼的に明らかなものの他に,内分泌あるいは免疫などの因子が関係していることはおそらく間違い無いものと考えられている。しかし内膜症によるどのような因子が妊娠成立のどの段階を阻害しているのかについては多くの研究がなされているにもかかわらず,まだ明確な結論は出ていない。また重症の子宮内膜症が不妊の原因となることは疑いないとしてはたして軽症あるいは中等症例でも不妊の原因となり,積極的な治療を行った方がよいのか,必ずしも明らかではない。このような基本的な疑問があるにもかかわらず,子宮内膜症と不妊の関係は多くの研究者の注目をあびているテーマである。子宮内膜症のうち内性子宮内膜症つまり子宮腺筋症は発症年齢も40歳以降に多く,不妊症という点では問題になることが少ないので,以後の議論は外性子宮内膜症に限ったものとしたい。
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