今月の臨床 計画妊娠—合併疾患への対応
循環器疾患
2.弁置換術後
木全 心一
1
Shin-ichi Kimata
1
1東京女子医科大学成人医学センター
pp.1238-1239
発行日 1991年11月10日
Published Date 1991/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900600
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妊娠の可能性のある心弁膜症症例に対する基本的考え方
妊娠時には体内水分量が増加する。このことは心疾患のある患者にとっては,心不全となる直前ないし,なった時の状態と同じである。特に肺うっ血を生じやすい僧帽弁狭窄では,肺血管内圧が上昇し,呼吸困難を生じて来る。その上,妊娠終期になると体位により肺血管内圧が変動しやすい状況にある。たとえば,仰臥位だと胎児が下大静脈を抑え,下肢にうっ血状態を作っている。これが側臥位となった時に,圧迫がとれて一気に肺に血液が戻って来て,肺血管内圧を上昇し,肺うっ血を増強する。
このように,僧帽弁狭窄,Eisenmenger化した先天性心疾患など,肺うっ血を生じやすい症例にとっては,妊娠が危険である。また不幸なことに,これらの疾患のある患者の中に妊娠の可能性のある女性も少なくない。この意味では,僧帽弁狭窄のように外科的対応が出来る患者に対しては,処置をしてから妊娠させたい。しかし,問題は人工弁置換すると,一般にはワーファリンを服用する。ワーファリンには催奇性があり,出血の危険もあり,ワーファリン服用下では妊娠をしないように指導するのが一般的である。
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