今月の臨床 子宮筋腫—こんなときどうするか
保存療法の効果と限界
23.内分泌療法
安水 洸彦
1
Takehiko Yasumizu
1
1山梨医科大学産婦人科教室
pp.1190-1191
発行日 1991年10月10日
Published Date 1991/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900590
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子宮筋腫に対する保存療法の概念
子宮筋腫は平滑筋細胞からなる良性腫瘍であり,組織学的には不活動型を呈し細胞分裂像を認めることはまれである。しかし生化学的には筋腫組織は全く不活性というわけではなく,エストロゲンやプロゲステロンのレセプターを始め,プロスタグランディンE・F系,オキシトシン,EGFなどの生体活性物質のレセプターの存在が確認されている。また代謝機構としても炭水化物,蛋白,ステロイドの代謝酵素系を保有する。ところが,これらの応答機構,代謝機構の存在と筋腫の発生や発育との関係については全く不明といって良い。わずかに高エストロゲン環境下でのみ子宮筋腫が発育することが,臨床的に経験的事実として周知されているのみである。
それゆえ,筋腫のみをターゲットとした薬物的治療は現時点では存在しない。現在,一般に筋腫に対する保存的内分泌療法とされているのは,偽閉経,偽妊娠療法に代表される低エストロゲン環境作成法と,月経異常など一定の内分泌異常が基礎となる症状に対する対症療法のいずれかと理解して良いだろう。
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