症例
出生前に診断された胎児腎腫瘍(先天性中胚葉芽性腎腫)の1例
後藤 英夫
1
,
増崎 英明
1
,
宮本 正史
1
,
山辺 徹
1
Hideo Goto
1
1長崎大学医学部産婦人科学教室
pp.115-118
発行日 1991年1月10日
Published Date 1991/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900287
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先天性中胚葉芽性腎腫congenital mesoblastic nephroma(CMN)は出生後早期に診断される腎腫瘍のなかで最も頻度が高い。最近では,超音波断層法による出生前診断が進歩し,胎児期の種々の病態が把握されるようになったが,CMNについてもいくつかの報告がみられる.CMNの出生前超音波像での特徴は,片側腎に壊死や出血巣による嚢胞像を伴う充実性腫瘍の所見である。また羊水過多を伴うが,その原因としては,胎児尿量の増加ないし胎児消化管からの羊水の吸収障害が想定される。CMNは病理組織学的には良性で,転移はまれであることから,外科的治療を行えば,予後は良好といわれる。今回,妊娠中に本症と推定された症例を経験したので報告する。自験例は妊娠36週で本症が疑われ,羊水過多による子宮収縮が強いため,羊水の経腹的吸引除去を行った。妊娠39週で3,460gの女児を出産し,翌日,右腎摘出術が施行され,術後18日目に退院した。
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