今月の臨床 不育症—その対策のすべて
治療の実際
30.不育症治療の予後
佐治 文隆
1
Fumitaka Saji
1
1大阪大学医学部産科婦人科学教室
pp.94-96
発行日 1991年1月10日
Published Date 1991/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409900283
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不育症の原因と治療法の選択
不育症の原因として多数の因子が存在する。母体側の原因で起こるものとしては子宮奇形・子宮腔癒着症・子宮筋腫などの子宮形態異常,頸管無力症のような子宮機能異常,トキソプラズマや梅毒などの感染症,黄体機能不全・甲状腺機能異常・糖尿病などの内分泌異常,ループスアンチコアグラントなどの自己免疫異常などがある。また胎児側因子としては先天的な染色体異常があげられる。さらに夫婦間あるいは母児間の関連が関与する因子として夫婦の染色体異常や,血液型不適合,そして免疫学的不均衡が考えられる(表1)。
不育症の治療は,その原因が上記のいずれに属しているのかを診断した上で,個々の原因に対する個別的治療を行う。治療法は内科的治療,外科的治療,両者の組み合せと様々であるが,その主なものを表1に示した。治療の時期も,子宮奇形に対する子宮形成術や子宮筋腫に対する筋腫核出術のように非妊娠時に行われるものもあれば,頸管無力症に対する頸管縫縮術や血液型不適合に対して行われる妊婦血漿交換療法や胎児輸血のように妊娠中に行われるものもある。また母児間免疫学的不均衡に対するリンパ球免疫療法のように非妊娠時だけでなく妊娠時にも追加免疫する治療もある。
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