症例
軽症型βサラセミア合併妊娠の1例
吉野 なな実
1
,
池田 枝里
2
,
遠藤 瑞穂
2
,
辻中 安菜
2
,
常見 浩司
2
,
橘 涼太
2
,
芦田 敬
2
1飯田市立病院
2飯田市立病院産婦人科
pp.838-843
発行日 2023年8月10日
Published Date 2023/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409211045
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▶要旨
サラセミアはグロビン産生低下による先天性の溶血性貧血および小球性貧血である.
症例は38歳女性.妊娠歴は2妊1産.妊娠初期検査で小球性低色素性貧血を認め,鉄剤を処方された.中期検査で貧血の改善はなく,その後,鉄剤は処方されなかった.血液検査で鉄欠乏は認めなかった.父と兄に貧血の家族歴があり,サラセミア貧血が疑われた.血液塗抹標本では,赤血球大小不同,標的赤血球,奇形赤血球を認めた.ヘモグロビン分画検査では,HbF,HbA2の上昇を認めた.遺伝子検査で軽症型βサラセミアと診断された.妊娠中はHb 9g/dL前後で経過し,胎児の発育は順調だった.妊娠39週3日に自然経腟分娩となった.
一般に妊娠時には鉄欠乏性貧血を伴いやすく,貧血に対して鉄剤を投与されることが多い.一方,サラセミアでは鉄過剰になりやすく,鉄剤の過剰投与は母体の不整脈やうっ血性心不全などのリスクとなる.鉄剤不応性の小球性貧血ではサラセミアを疑うことが重要である.
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