今月の臨床 細菌叢から読み解く女性と子どものヘルスケア
周産期
絨毛膜羊膜炎と羊水中の細菌感染―新たな早産予防・治療戦略の確立に向けて
漆山 大知
1
,
秦 健一郎
2,3
,
宮本 新吾
4,5,6
1福岡大学医学部産科婦人科学講座
2群馬大学大学院医学系研究科分子細胞生物学講座
3国立成育医療研究センター研究所周産期病態研究部
4岩手医科大学産婦人科学講座
5キュベレ株式会社
6ナノアーキア合同会社
pp.704-710
発行日 2023年7月10日
Published Date 2023/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409211019
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●子宮内への細菌感染や子宮内炎症(絨毛膜羊膜炎)は,早産の主要な原因であり,出生児に多大な悪影響を与える.そのため,子宮内感染/炎症の予防と治療は重要であり,早産予防や早産児の予後向上に繋がる.しかし,子宮内感染/炎症では,抗菌薬などを用いた起炎菌に対する早産予防は現段階では推奨されておらず,的確に診断するための羊水穿刺も保険適用がなく,母体の炎症が明確になるまで治療されない.
●これまで早産関連の子宮内感染は妊娠中に治療できないと考えられていた.しかし近年,広域抗菌薬治療が奏効したという報告が散見されはじめ,妊娠中に子宮内感染を早期治療する必要性が論じられるようになった.また,次世代シーケンサーやドロップレットデジタルPCRの登場によって,妊娠中の羊水中の細菌を迅速かつ網羅的に定量可能となってきた.
●そこで,子宮内感染/炎症に関する最新のエビデンスを整理したのち,現在の周産期管理における問題点と考えられる①抗菌薬の選択,②治療効果の判定,③治療症例の選択を整理し,新たな周産期管理について考察する.
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