連載 FOCUS
卵子凍結の社会的適応
菊地 盤
1
,
香川 則子
1
,
野島 美知夫
1
,
吉田 幸洋
1
1順天堂大学医学部附属浦安病院産婦人科
pp.766-770
発行日 2017年8月10日
Published Date 2017/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409209138
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はじめに
胚および配偶子など細胞・組織の凍結保存技術は,体外受精における多胎のリスク軽減のみならず,次回胚移植への可能性を残すことも可能とし,特に緩慢凍結法からガラス化凍結法への技術転換は,手法を簡便にしたばかりでなく,大型の高額な機器を不要にし,凍結卵子の生存率を飛躍的に向上させ,臨床応用を加速させた1, 2).卵子の凍結保存法は,がんなどの治療のための化学療法や放射線療法前の妊孕能温存のためにも用いられるようになり,各生殖ガイドライン上も推奨されるようになっている3〜6).
同様な方法を用い,自身のキャリア継続などのために,若年での卵子を凍結保存しておく,といういわゆる「社会的適応」による卵子凍結保存も話題となっている7).医学的適応と異なり,「社会的適応」での卵子凍結には,やや否定的な意見も多いが,この「社会的適応」自体,さまざまな要因が絡み合うため,実際にはその背景は複雑である.われわれは,近年話題となった浦安市での卵子凍結研究を通じ,そのことを痛感している.本稿では,浦安市での研究を含め,「社会的適応」による卵子凍結につき,論じてみたい.
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