原著
子癇の前駆症状とその意義
有澤 正義
1
,
和田 芳直
1
,
藤田 富雄
1
,
木戸口 公一
1
,
林 昭
1
Masayoshi Arizawa
1
1大阪府立母子保健総合医療センター母性内科
pp.1117-1120
発行日 1989年11月10日
Published Date 1989/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409208116
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子癇は迅速かつ適切な処置を要する重要な疾患である。子癇の臨床像の解析によって子摘発症をより的確に予知できれば母体と児の予後の改善ができるのではないかと考え,当センターで経験した13例の子癇について検討した。
妊娠,分娩,産褥子癇はそれぞれ6例,3例,4例であった。初産婦の割合は13例中11例であり,肥満者は認められなかった。妊娠合併症である重症妊娠中毒症は10例,常位胎盤早期剥離の合併は3例,いわゆるHELLP症候群が5例合併していた。その他,帝王切開術や死産の割合も高かった。また,子癇の前駆症状として頭痛,視力低下,眼華閃発,不穏状態,多弁などが認められた。このなかで,眼華閃発,不穏状態,多弁などはまさに子癇発作をおこす直前にみられた。このような背景および臨床症状をもつものは,入院してからの血圧の変動,全身状態の把握により機会を逸することなく薬剤を投与することが母児ともにリスクの高い子癇の発症を予防する方法であるかもしれない。また,当センターで妊娠を管理していた者の発症時期については,入院して1日目が多かった。このことは入院による環境の変化が発症のなんらかのtriggerではないかということも推測された。
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