特集 生殖免疫
生殖機能と自己免疫
森 崇英
1
,
野田 洋一
1
,
神崎 秀陽
1
,
井田 憲司
1
Takahide Mori
1
1京都大学医学部婦人科学産科学教室
pp.1091-1095
発行日 1988年12月10日
Published Date 1988/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207907
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免疫応答は自己を認識することにより始まるリソパ球ネットワークにより構成されている。生体の細胞は内外の諸因子により絶えず変化しているため,自己の組織に起こる異常に対して反応し,それを排除していく自己免疫反応は自己防御にとって必須の生体反応といえる。自己免疫は生体にとって重要な生理的反応であるが,通常は免疫ネットワークに組み込まれて巧妙に調節されているため表面に現われないと考えられている。この調節機構になんらかの破綻が起き,通常では応答を引き起こさない自己抗原までもが排除の標的となり,その抗原に対する抗体産生が認められるようになり,臨床的にも病的現象(組織破壊など)が現われた場合がいわゆる自己免疫疾患である。
生殖生物学の領域においても,生殖細胞に対する自己免疫によって生殖機能が著しく侵されるという可能性が考えられている。動物実験では,精子抗原で能動免疫を行ったり,あらかじめ免疫しておいた動物よりの免疫細胞や血清を移入することで実験的アレルギー性睾丸炎が引き起こされる1)2)。また卵子を抗原として実験動物を免疫すると,妊孕能が著しく低下することも知られている3)。このような知見は,卵子や精子には自己の免疫応答を起こし得るに充分な抗原性があることを示している。
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