特集 手術療法の進歩
卵巣性不妊
藤井 明和
1
,
小林 善宗
1
Akikazu Fujii
1
,
Yoshimune Kobayashi
1
1東海大学医学部産婦人科教室
pp.815-817
発行日 1988年9月10日
Published Date 1988/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207857
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卵巣性不妊に対する手術療法には,腹腔鏡下の卵巣手術と,開腹による卵巣手術があげられる。不妊症領域における卵巣手術の問題点は,あくまで目的が妊娠成立にあるという立場で論じられなければならない。したがって,まず,いかに卵巣実質を多く残して術後の排卵障害を防止するか,さらに術後の癒着をいかに防止するかが最も重要なポイントであろう。また,さらに付け加えるならば,同様な治療効果をあげられるなら,いかに患者にとって侵襲の少ない方法を選択できるかも重要なことである。
不妊における卵巣手術の進歩はmicrosurgeryの進歩と決して無縁ではない1,2,3)。卵管性不妊に対してはmicrosurgery手術により,その成績は飛躍的に向上したが,同時に卵巣に対してもその概念が導入された。すなわち,組織の損傷を極力少なくすることと,いかに卵巣漿膜面つまり卵巣表面を侵襲なく手術縫合しうるかが重要な点である。本稿では,卵巣性不妊に対する手術療法の進歩として,患者侵襲の最も少ない腹腔鏡下手術療法と,microsurgery概念を用いた卵巣手術を中心に述べたい。さらに最近不妊症領域で重要な問題となっている子宮内膜症に関連して,そのchocolate cystに対する我々の治療法の根本的な変化についても述べたい。
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