生涯研修セミナー 不妊症
男性不妊因子の評価とその対応
相良 祐輔
1
,
山中 恵
1
,
岡谷 裕二
1
Yusuke Sagara
1
1高知医科大学産科婦人科学教室
pp.558-562
発行日 1988年6月10日
Published Date 1988/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207807
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男性不妊の原因は多岐にわたり,しかもその多くは病因を明確にしえない特発性男性不妊が大部分を占めており,実地臨床上苦慮する疾患の一つである。しかしながら,近年体外授精を機会に男性因子をめぐる研究はめざましく,その病態も次第に明らかにされつつある。すなわち従来精子数,運動率,奇型率などに限られていた精液検査についても精子運動形態の詳細な解析や精子の授精能を考慮した精子機能検査法や抗精子抗体などの免疫学的なアプローチもなされており,新しい病態解明がなされつつある。治療の面では外科的治療として造精機能障害と関連をもつ精索静脈瘤やマイクロサージェリーの進歩に伴う精管吻合術など新しい治療法が確立しつつあるが,新しい病態知見に対応したものは現在なお少ない。薬物的にはホルモン療法と非ホルモン療法に大別されるが,これら薬剤の選択のための規準は未だ確立しているとは言い難く,今後ある程度の病態の解明をまって,これら薬剤の選択のための個別的規準が設定されるものと考えられる。人工授精については妊娠率の向上のための対策として,採取精液の性状改善のためにいくつかの方法が考案され臨床応用化への検討がなされつつある。さらに男性因子についての体外授精・胚移植(IVF-ET)の適応規準は未だ明確ではないが,今後詳細な適応規準が確立され実施されるものと考えられる。
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