特別掲載 絨毛癌の転移—第5回絨毛性疾患懇話会から
「絨毛癌の転移」掲載にあたって,他
相馬 廣明
1
1東京医科大学産婦人科
pp.861-891
発行日 1987年12月10日
Published Date 1987/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207708
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昭和62年8月27日,夏も遅い箱根芦の湖畔の山のホテルで,第5回絨毛性疾患懇話会が開かれた。今回の主題は「絨毛癌の転移」であったが,21題の演題が集まった。記事の枚数の制限のためその中で主題に関係ある演題をここに集録することにした。そのほか中国成都の華西医科大学曹学長,韓国ソウル大学李副教授,タイ国バンコック,チュラロンコーン大学リンポンサムラック助教授の特別講演があり,懇話会を一層盛り立てた。本邦では化学療法の普及や管理の向上などで,絨毛癌転移の悲惨な転帰をみることが数少なくなったように思えるが,まだまだ絨癌の遠隔転移による死亡例は絶えない。ことに抗がん剤に対する耐性癌の出現や,化学療法と手術療法の併用で消失したと思われた転移腫瘍が,違った部位に再発してくるというような執拗な腫瘍の悪性度に私どもは苦い経験を持ち続けて来ている。他方アジアの諸国では,依然として本疾患の発生数は多く,それに対する充分な診断治療も行われていないところも多い。かつてアジア民族の疾病とまでいわれた本疾患について,欧米諸国にのみ目を転じておれば,あたかも本疾患の究理が極まったかのような錯覚をみることがある。本腫瘍はそんなeasyな腫瘍ではない。
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