境界領域の再評価とその展開 特集
産婦人科に必要な形成・整形外科の知識
婦人と美容外科
谷野 隆三郎
1
Ryuzaburo Tanino
1
1東海大学医学部形成外科学教室
pp.825-828
発行日 1987年12月10日
Published Date 1987/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207700
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近年わが国における美容外科の発展はめざましいものがあり,日本美容外科学会も発足後10年をむかえ,ようやく美容外科学として形態を整えるべく徴がみえてきた。これは,ひとつには形成外科をベースとした本来の美容外科医達の努力の結果であり,またもうひとつには手術を希望する側,すなわち患者の意識改革にある。これら両者があいまって始めて,いわゆる美容外科が医学として日の目をみるに至るのである。実際には,患者の意識に未だ"うしろめたさ"といった感情がぬぐい去れないのが現状であるが,例えば乳癌根治後の乳房再建希望者が急増している現象をみても,"手術は1回でたくさん"あるいは"いまさらそんな手術を受けるのは恥ずかしい"といった感情に増して,美への追求,少なくとも,でき得る限り元に近い形に戻ることへの欲望が当然化しつつあることは事実である。これは更に,皺とり術,脱脂術などにみられる"若さ","標準体"への願望に通じるものがある。そしてこれらの背景には情報量の増加,経済的・時間的ゆとりといった社会環境の変化が大きな一因となっている。ちなみに美容外科の外来を訪れる患者の9割が女性といっても過言ではない。それではその中でどんな手術が多いかというと,勿論施設にもよるが,やはり重瞼術や眼瞼の皺とり術といった眼瞼部の手術が半数以上を占める。
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