境界領域の再評価とその展開 特集
産婦人科に必要な形成・整形外科の知識
人工造腟術
神保 利春
1
Toshiharu Jimbo
1
1香川医科大学母子科学講座
pp.821-824
発行日 1987年12月10日
Published Date 1987/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207699
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人工造腟術の対象となる腟欠損または腟閉鎖には,先天性のものと,外傷や炎症による後天性のものがあげられる。先天性であれ,後天性であれ,正常の子宮を持ち,将来妊娠や出産の可能性が期待できる腟欠損や腟閉鎖症では,思春期に至って,無月経の主訴に加えて,周期的下腹痛や下腹部腫瘤を伴うので,治療医学的立場から,造腟術の絶対的適応となる。先天性腟欠損の95%近くを占めるRokitansky-Küster-Hauser症候群の場合は,性生活のための機能回復を目的として造腟術が施行される。
造腟術は,術式の種類が多彩であるという点において,産婦人科領域の手術のなかでは,子宮脱垂手術とならんで双壁をなしている。術式の種類が多いということは,それだけ治療がむずかしいことにも通ずるが,形成手術であるだけに,一度失敗すると再手術は更に困難となる。すなわち,初回手術にあたっては,疾患の種類,欠損の程度,患者の年齢,疾患や治療に対する患者の理解度などを充分把握するとともに,一方で,各術式のもつ特徴,長所・短所を充分認識したうえで,術式を選択することが大切である7)。
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