めずらしい病気
ヒゲのある婦人
渋沢 喜守雄
1
1前群馬大学
pp.71-72
発行日 1963年1月10日
Published Date 1963/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662202741
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思春期まえの女児の唇に,ウブ毛のような軟い毛がかなり沢山はえ,お母さんを心配させることは,決してまれではありませんが,これは病的というほどのことでなく,思春期ごろになると,何時かしら普通の人並みになり,毛のことなど忘れ去ります.思春期をすぎ,結婚しようという年ごろ,または結婚してから,男のような黒い硬い毛が唇にかなり多く生えて,その他の体部の発毛も普通の婦人よりは濃く,ときどきニキビもできるという婦人があります.私の知つている,そうした多毛の一婦人は月経が不順で,結婚10年の生活を送つて妊娠して.このごろ血圧がいくらか高いといつて心配しています.こうした多毛の婦人は,とかく心配性,苦労性で,ノンキでなく,いつも何だかクヨクヨしている傾きがあります.また別の,私の知つている多毛症の婦人は御主人の事業が失敗した精神的経済的の打撃から,多毛になつたそうで,今は音楽指導を自らしていますが大変エモーショナルです.ヒゲは生えていますが,陰核が大きくなるとか,声がダミ声になるとかいう男性化の傾向までは,みられません.
こういうのを単純または特発の多毛とよびます.精神的な打撃,エモーションの不安定で,副腎が刺激され,そのために,副腎から男性ホルモンが余計に分泌されるためです.
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