境界領域の再評価とその展開 特集
産婦人科と腎
化学療法と腎機能障害
高林 俊文
1
,
佐々木 裕之
1
,
矢嶋 聰
1
Toshifumi Takabayashi
1
1東北大学医学部産婦人科教室
pp.527-529
発行日 1987年8月10日
Published Date 1987/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207635
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抗癌剤,抗生物質は主に肝臓で不活性化され,排泄は腎臓が大きな役割を担っている。腎臓の排泄機構の主なものは,①糸球体濾過,②尿細管分泌,③尿細管再吸収,④尿細管細胞内蓄積,細胞構成成分への結合,⑤薬物代謝などであり,薬物の排泄はこれらのうちの単一あるいは複数の機構を介して行われる。特に糸球体での濾過は毛細血管壁を介した単純な加圧により,分子量5,000以下の物質はほぼ100%濾過されるが,薬物の蛋白結合率や荷電などの条件により変化する。さて,腎臓は以上のような尿濃縮機能を持ち合わせていることから高濃度の薬剤に接触する機会も増え,たとえば腎盂,尿管,膀胱は高濃度の薬剤に直接曝されたり,腎実質内にそれらの物質が蓄積されたり,尿細管内で濃縮を受けたりするので薬剤による影響を他の臓器以上に受けることが考えられる。そこで近年,薬剤の種類や使用する機会が多くなってきた抗癌剤,抗生物質の腎機能障害とそれらの対策についても述べる。
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