境界領域の再評価とその展開 特集
産婦人科心身症
精神科医からみた産婦人科関連の心身症
笠原 嘉
1
Yomishi Kasahara
1
1名古屋大学医学部精神医学教室
pp.299-301
発行日 1987年5月10日
Published Date 1987/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207582
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きっと読者は精神医学が精神病だとか神経症(ノイローゼ)だとか心身症だとか性格異常(性格障害)といったわかりにくい概念を使って話をすることに多少とも抵抗感をおもちだろう。このあたりを少し整理しておみせすることから話をはじめたい。まず「精神病」と「神経症」の差は精神障害の重篤度のちがいと考えていただいてよい(図1)。そして神経症と精神病の間の移行は,全くないわけではないが,あまりない。いい換えると,神経症は長びくことがあっても神経症のレベルに止まるのが,ふつうである。これに対し,「正常範囲」と神経症との間の移行は十分ありうる。瞬間をとらえれば誰もが神経症的であるかもしれない。例えば,ガスの栓をしっかり締めたと知っていながら,もう一ぺん,いやもう三べん確認しなければ「気がすまない」というようなことは,比較的ひろくみられる。しかし強迫神経症と精神科医が診断するには,このようなことが持続的におこりつづけていなければならない。その差は図2のようである。正常範囲内の悩みは長つづきしない。神経症の悩みは同心円上を動きつづける。
では本誌のテーマである「心身症」はどこに置かれるか。図1でいえば,それは神経症レベルの障害である。決して精神病レベルの重い障害ではない。これがまず第1点。次に心身症はその名のとおり「身」体の症状を明白にもつ(たとえば消化器潰瘍,円形脱毛症といったように)。
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