境界領域の再評価とその展開 特集
産婦人科心身症
女性心身症に見られる心理的課題
遠山 尚孝
1
Naotaka Tohyama
1
1東京都精神医学総合研究所臨床心理研究室
pp.303-305
発行日 1987年5月10日
Published Date 1987/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207584
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その時代の社会的・文化的な影響を強くこうむる精神疾患があるとすれば,現代では,うつ病,心身症,アルコール依存症,境界例・人格障害などがあげられようか。いずれも今日の社会・文化状況と,そこでの人格形成,その伝承・発展などの点で共通項を持っているように思われる。それをごく手短かに,人の新たな解放へと向けた変動の軋みによるもの,と言って良いかもしれない。戦争や革命などの急激な社会変動はないが,静かに変貌を遂げつつあるこの時代にあって,とかく旧来秩序・文化の担い手となる女性たちが,その影響を蒙って心身症へと陥ることも少なくないように思われる。それは家庭内での性役割(母,妻,女としての)と,それに調和させつつ相応の社会的役割を獲得していくという女性達自身の課題であるばかりでなく,また同時に,男性の側の視点や対応の変化も求められているように思われるのである。
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