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特集 精神疾患の現代的病像をめぐって
精神疾患の現代的病像をめぐって—序にかえて
Changing Styles of Psychiatric Pictures in Contemporary Japan
笠原 嘉
1
Yomishi Kasahara
1
1名古屋大学医学部精神医学教室
1Department of Psychiatry, Nagoya University School of Medicine
pp.808-810
発行日 1990年8月15日
Published Date 1990/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405902886
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精神疾患の病像が時代や地域によって微妙に異なることは,よく知られている。したがって,1980年代を中心に日本における現代的病像と思われるものを記述し考察することには,それなりの意義があろう。
神経症ないしその関連の病像が現代風のスタイルをとることは,ある程度当然である。社会への適応障害という側面を多かれ少なかれもつからである。しかし,成人の場合に限っていえば,意外にも特記するべきものを見出せない。ということは教科書的神経症類型は時代を越えて安定したもので,その記述はかなり完成されたものというべきか。日本だけではなく外国文献も視野に入れると,唯一,不安神経症もしくは不安障害(anxiety disorders)の名が文献に登場することが多いことに気づく。DSM-Ⅲ,DSM-Ⅲ-Rの中でも不安障害はていねいに手の加えられている一章である。それに社交恐怖症(Social phobia)の名で対人恐怖症(森田)類似の病像も記述されている。逆に少なくなったものとして,離人神経症の人に外来で出会う頻度が落ちたという精神科医が何人かおられる。神経症のからみについては高橋徹氏をわずらわせた。
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