思い出の写真
臨床細胞学の巨匠たち
増淵 一正
1
1癌研究会附属病院
pp.122-123
発行日 1987年2月10日
Published Date 1987/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207545
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私は74歳になった。私が癌研病院の婦人科部長に就任したのが1949年で,その後37年を経ており,現在で人生の正に半分に相当する期間を癌研で過したことになり,想いを廻らすと感慨深い。私が癌研に赴任した当時,家内に一生に一度は欧米へいって勉強したい,と言ったものだ。現在は猫も杓子も海外旅行をするが,その当時は想いも及ばなかった。ところが,思いがけず,米国大使館から米国へ招聘するとの申出があった。そして遂に1956年2月11日訪米することになった。私は文献その他から訪問したい学者のリストを作って米国国務省に提出した。私のその後に及ぼした大きな転機は米国国務省からの招きによってかねてから夢みていた尊敬する学者に会えたことである。米国に4か月,ついで欧州に2か月ほどの滞在で実に多くの先生にお会いして教えていただいた。それらの先生すべてに強烈な思い出がある。
私の欧米旅行で特に感じたことは,世界的な権威の学者が実に気易く会って下さって何でもよく教えて下さったことである。日本にいるとえらい先生は怖いものだが,私のように当時は若い日本の無名の人物に対してさえ親切に迎えて下さった。今回は,はからずも欧米見学が引き金になった臨床細胞学に関連した思い出をスナップ写真を中心にしてお話してみたい。
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