映画の時間
—世界の巨匠が最後に残したのはフランスのエスプリとイギリスのユーモアの見事な融合—愛して飲んで歌って
桜山 豊夫
pp.141
発行日 2015年2月15日
Published Date 2015/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401208126
- 有料閲覧
- 文献概要
麗らかな陽光を浴びた美しい田園風景の映像から映画は始まります.その美しい風景に見とれていると英国の地図が現れ,カメラはヨーク市に寄って行き,観客はこの映画の舞台がイングランド北部に位置するヨークシャー地方であることを理解します.次に映像は趣のあるスケッチ(書割)に変わり,さらにその書割から抜け出たような舞台が現れます.1組の男女が何か深刻な話をしているような雰囲気ですが,それは村芝居の稽古のようで,どこまでが劇でどこからが実生活なのかよくわからないようなファーストシーンです.
2人は開業医である夫のコリンと妻のカトリーヌ.芝居の稽古の最中に,ある患者を紹介した病院から病理検査の結果を知らせてきます.患者は末期がんで余命いくばくもない様子.好奇心旺盛の妻カトリーヌは,患者の秘密は妻にも言えないとい言うまじめな夫コリンから無理矢理に名前を聞き出します.患者は夫婦の共通の知人であるジョルジュでした.がんに侵されたジョルジュを案じてか,あるいは単におしゃべりなだけなのか,カトリーヌは夫との約束を破って,ジョルジュを知る友人に彼が末期のがんであることを告げてしまいます.
Copyright © 2015, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.