講座 実地医家のためのホルモン講座
エストロゲン—非妊時
寺川 直樹
1
,
脇本 博
1
,
堤 博久
1
,
林田 美代子
1
,
清水 郁也
1
,
池上 博雅
1
,
青野 敏博
1
Naoki Terakawa
1
1大阪大学医学部産婦人科教室
pp.266-270
発行日 1985年4月10日
Published Date 1985/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207161
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非妊時の卵胞ホルモン,エストロゲンの主たる産生臓器は卵巣である。卵巣より分泌されたエストロゲンは,その作用を発揮したのち肝で代謝され,グルクロン酸あるいは硫酸抱合型となって尿中に排泄される。エストロゲンの作用発現機序は長い間不明であったが,1962年,Jensen&Jacobson1)によっておこなわれた研究成果によって明らかとなった。すなわち,放射性estradiolをラットに注射すると子宮などの標的臓器にのみエストロゲンの選択的取り込みが認められ,細胞内にエストロゲンと特異的に結合する受容体,レセプターの存在が発見された。その後の研究により,生体内で分泌されるエストロゲンあるいは外来性に投与されたエストロゲンは子宮などの標的組織の細胞内に存在する分子量7〜80,000のエストロゲンレセプターと結合することにより,エストロゲンの作用を発揮することが現在では定説となっている。
さて,性周期を有する婦人の卵巣は他のステロイドホルモン分泌臓器である睾丸や副腎皮質と異なり,下垂体性ゴナドトロピン刺激下に卵胞発育,排卵,黄体形成という周期性を有し,それに伴ってエストロゲンの分泌パターンも異なること,かつ組織学的にも間質,莢膜,顆粒膜細胞から構成される卵巣でのエストロゲン生合成過程は複雑である。本稿では卵巣におけるエストロゲン生合成機構を中心に概説したい。
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