明日への展開--ヒューマンバイオロジーの視点から 子宮
Ⅱ.内膜
脱落膜変化をおこした子宮内膜におけるプロラクチンの産生と放出
武谷 雄二
1
,
水野 正彦
1
,
坂元 正一
1
Yuji Taketani
1
1東京大学医学部産科婦人科学教室
pp.535-540
発行日 1984年6月10日
Published Date 1984/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409207018
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prolactin (PRL)は本来,ヒトを含む哺乳動物において乳汁分泌を誘起する催乳ホルモンとして知られ,ラットやマウスなどではさらに黄体維持作用もあり,生殖現象に関わるホルモンとして把えられてきた。ところが比較内分泌学の進歩に伴いPRL類似物質(組織化学的にカーミンやエリスロシン親和性)が各種脊椎動物の下垂体に存在し,魚類にまでさかのぼってPRLの祖先ともいうべきホルモンが見出されることが明らかとなった1)。
脊椎動物は数億年を費やし水棲から陸棲へと進化してきたが,PRLはその間の環境の変化に対応しうるようにその作用部位や作用様式を変え種属の維持をはかってきたのである。すなわちPRLの作用は非常に多岐にわたり,その作用の変化を系統発生的にたどると哺乳類が進化してきた軌跡を垣間見ることが可能であるといっても過言でない。
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