産婦人科医療--明日への展開 病態生理の新しい理解
Ⅱ.産科篇
妊娠中毒症
日高 敦夫
1
,
北中 孝司
1
,
鈴木 良紀
1
Atsuo Hidaka
1
1大阪市立大学医学部産科婦人科学教室
pp.859-865
発行日 1983年12月10日
Published Date 1983/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206908
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妊娠中毒症は,現在でもなお学説の疾患としてその病態論に統一的な見解が得られていない。そしてそのことが妊娠中毒症の疾患性格そのものを物語っているのかもしれない。すなわち妊娠中毒症の病態を単一のものとして把える(例えば"胎盤毒素説")のではなく,「妊娠現象における母体の適応不全症候」という概念(須川)で把えることが必要と考えられる。
妊婦においては,内的に内分泌,代謝,免疫それぞれの環境変化がもたらされ,しかも子宮をはじめとする各臓器の形態,機能の変化と相まって,妊娠維持,分娩を目的とした生体の適応現象として発現しているものと理解されている。そしてその適応現象も生体の恒常性維持の原則の中で一定の限界があり,その限界に達する時点で分娩が発来するものと解釈される。そうした時,分娩発来時期に到らずして適応能が限界に達した時,そこに"妊娠中毒症症候"の発症をみるという理解である。
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