臨床医のプライマリ・ケア 救急医療のfirst aid
急性腹症—産科での処置
藤原 敏郎
1
Toshio Fujiwara
1
1大阪市立北野病院,産婦人科
pp.85-87
発行日 1982年2月10日
Published Date 1982/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206559
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急性腹症といえば強い腹痛・嘔気・嘔吐・腹部膨満・ショックのような症状を急激にきたすことをいう。したがってその原因は多様であり,対象を妊婦に限っても純粋に産科的なものもあれば妊娠に合併した外科的あるいは内科的な疾患のこともある。そしてこのような急性腹症の患者が突然来院したときにはその経過もわかりにくく,問診もできない状態のことも多い。しかし診断を正確にするためには本人あるいはその周囲からでも極力情報を集めねばならず,現症歴はもちろん,月経や妊娠歴,既往の手術などについても詳しく聞きたい。同時に内出血などの有無,ショック状態かどうかなどを判断して,最小限血管の確保を行ない輸液をはじめる。持続尿道カテーテルを操着し排尿と尿量の計測をはかり,必要なら輸血・酸素投与を行ない,胃内容吸引と気道確保の準備も行なう。診察も同時に併行して行ない,聴打診・触診・内診・直腸診・ダグラス窩穿刺あるいは腹壁からの穿刺も行なう。vital signに注意し,CBCを行ない,血小板数・血沈・出血時間・凝固時間など血液を検し,さらに胸腹部のX線写真(立位が無理のときは側臥位)・心電図・尿妊娠反応・ジアスターゼ・血清電解質・酸塩基平衡・アミラーゼの検査などを必要に応じて行なう。また要すればセルシソ,ソセゴンなどによる疼痛の緩和・副腎皮質ホルモンの投与,抗生物質の投与なども行なう。その他情況に応じては止血剤・利尿剤・肝庇護剤なども投与する。
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