Modern Therapy 卵巣の手術
良性卵巣腫瘍の手術—性腺機能温存のための配慮
東條 伸平
1
Shimpei Tojo
1
1神戸大学医学部産科婦人科学教室
pp.491-502
発行日 1981年7月10日
Published Date 1981/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409206455
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卵巣の良性腫瘍や非腫瘍性腫瘤形成疾患の手術療法について述べることになるが,対象が良性であるから,手術の基本理念は腫瘤の完全な摘除とともに,いかにして卵巣の健常実質部を温存するかということにある。このことは単に卵巣の疾患にかぎらず,他の疾患において卵巣を付属器摘除(salpingo-oophorectomy)の併用という形で除去することの問題にも通ずる。性腺の除去は患者の生涯にわたって内分泌や代謝につよい変化をもたらすのみならず,精神の裡に大きな瘢痕を残す。
たとえば,患者がリプロダクティブ・エイジにあるか,それに向かう年齢層のものか,またはすでに更年期にあるものについても,そのいかなる時期にあるかによって,卵巣摘除のもたらす結果は異なる。前2者では内分泌・代謝の変化に基づき,個体の生活現象が攪乱されるのみならず,現在あるいは未来の生殖機構の障害に直接関係するし,更年期にあるものでも,性腺の活動が多少とも保たれているものに両側卵巣の摘除を行なうことには,いわゆる加齢現象を助長するという結果を招く可能性がある。
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