今月の臨床 これを読めばすべてわかる―最新の産婦人科超音波診断
II 婦人科領域における超音波診断
[付属器疾患の超音波診断]
2.卵巣良性腫瘍
箕浦 茂樹
1
,
中西 美紗緒
1
1国立国際医療センター戸山病院産婦人科
pp.446-453
発行日 2010年4月10日
Published Date 2010/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409102322
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
良性腫瘍の多くは嚢胞性であるが,線維腫,莢膜細胞腫,ブレンナー腫瘍のように充実性腫瘍もある.卵巣には腫瘍性病変以外にも,貯留嚢胞がしばしばみられる.またときとして炎症性腫瘤がみられることもあり,卵巣腫瘍との鑑別を要する.ちなみに当科における良性卵巣腫瘍手術例306例の検討では,成熟奇形腫(100例,32.6%)と子宮内膜症性嚢胞(96例,32.2%)で全体の約3分の2を占めた.なお,成熟奇形腫の96.0%(96例)が成熟嚢胞性奇形腫であり,その他は成熟充実性奇形腫であった.次いで,粘液性胞腺腫が37例(12.0%),漿液性嚢胞腺腫が28例(9.1%)であった.このほかに,線維腫6例(1.9%),単純性嚢胞6例(1.9%),莢膜細胞腫3例(0.9%),卵巣甲状腺種2例(0.6%),傍卵巣嚢腫14例(4.5%),卵胞嚢胞7例(2.3%),黄体嚢胞4例(1.3%)であった1).また,腫瘍の大きさと良性・悪性との関係については,腫瘍の最大長径が15cmを超えると約半数が悪性もしくは境界悪性というデータもあり2),読影に注意を要する.
最近は多くの病院でCTやMRIが比較的容易に撮れるようになり,特に研修病院ではややもすればそれらに頼りがちになるきらいがあるが,実際には超音波でほとんどの卵巣腫瘍は診断可能であり,できるだけ詳細に超音波所見を読み取る努力をすることが肝要である.
Copyright © 2010, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.