特集 手術とFunctional Anatomy
Ⅰ.総論
リプロダクション機能温存のための手術への志向
東條 伸平
1
,
足高 善彦
1
Shimpei Tojo
1
,
Yoshihiko Ashitaka
1
1神戸大学医学部産科婦人科学教室
pp.786-791
発行日 1978年11月10日
Published Date 1978/11/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205914
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保存療法(内科的療法)か手術療法(外科的療法)か,あるいは根治手術か保存手術かという問題は疾病の治療法の選択にからんで常に議論の的になる。しかし,このことを論じる前に,まずわれわれは疾患を治すというよりも病人(患者)を治すことが目的であることをあらためて認識しなければならない。また,医師の心底には病気あるいは病人を治す,治してやるという,おごりの精神的姿勢があることにも気付かねばならない。病気が治るのは病人自身であり,それは,自然の治癒力によるものである。医師は患者が一日も早く以前の健康状態を取り戻せるように介助しているのにすぎない。その手段が内科的,あるいは外科的治療法つまり治療そのものなのである。患者を治してやるという意識や進行癌を手術によって征服しようというようなsurgical heroismの念があるとすれば,これはつよく自己批判されねばならぬ。
手術療法によらなくとも,ほとんど同程度にまで以前の健康状態を取り戻せるのであれば,内科的療法でよい。手術療法は実地医療における最後の手段であって,決して最良の方法ではない。病巣部の切除は疾患自体の治療にはダイレクトにつながるが,個体の全機性としての機能がそれによって多少とも損われるのであれば理想的治療法とはいえず,いわばきわめて原始的な,プリミティブな手段にすぎない。
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