新しい視点をさぐる 薬物療法のBlind Spots
流・早産・産褥における乳汁分泌促進および抑制剤
佐竹 実
1
Minoru Satake
1
1札幌医科大学産婦人科学講座
pp.357-359
発行日 1978年5月10日
Published Date 1978/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409205831
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産褥における新生児哺育には母乳栄養の重要性が認識されているが,母乳分泌が十分でない場合がしばしばあり,妊娠・産褥における指導,一般的な処置とともに分泌促進に対する薬物療法が行なわれる。また,妊娠中期以後の流・早産,勤労婦人における分娩後の職場復帰,母体の重症合併症(心・肺・肝疾患,悪性腫瘍,妊娠中毒症の遷延ないし後遺症,精神神経疾患など),死産あるいは新生児死亡,重症新生児黄疸,極小低出生体重児,産褥乳腺炎および乳汁分泌過多などでは乳汁分泌を抑制する必要があり,授乳中止や乳房の冷罨法などとともに薬物による乳汁分泌抑制をはからなければならない。
乳汁分泌の促進と抑制については,従来,一般に関心が乏しく,薬物療法も必ずしも有効性は期待されていない。また,医薬品の再評価,副作用などのために臨床応用のできない薬物や効果に疑問がある薬物もみられ,問題点も少なくないと思われる。しかるに,近時,乳汁分泌機構の内分泌,超微形態学研究の進展により妊娠,分娩,産褥におけるProlactin (以下PRL)を中心とする内分泌環境,prolactin放出因子PRF,prolactin抑制因子PIFおよびprolactin receptorの乳汁分泌への関与が解明されてきたので,この機序に基づいた薬物療法の展開に期待が寄せられている。
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